猫のSOSを見逃さない!獣医が教える猫のストレスサインと対処法

夜、ふとリビングに戻ると、うちの猫がテーブルの下に丸まって動かない。
「どうしたんだろう…?」
名前を呼んでも小さく瞬きをするだけで、こちらへ来ようとしない。
30年以上猫と暮らし、また現場で多くの相談を受けてきましたが、
猫のストレスは“静かに進行する”からこそ危険です。
大声で鳴くわけでも、助けを求めるわけでもない。
むしろ、そっと身を隠しながら「言葉にならないSOS」を出していることのほうが多いのです。
この記事では、
猫のストレスサインの見つけ方から、家庭でできる対処法まで
実体験と専門的知見を織り交ぜながら、分かりやすく解説していきます。
猫はストレスを隠す生き物
「大丈夫そうに見える」が一番危ない
猫は本来、弱みを見せない動物です。
野生時代の名残で、体調が悪くてもストレスを抱えていても、できる限り平常を装います。
だからこそ、飼い主が“ほんの小さな変化”に気づけるかどうかが重要です。
私が現場で見てきた猫たちも、ストレスがピークになるまでほとんど表に出しませんでした。
飼い主さんが異変に気づいた時には、すでに膀胱炎や食欲不振などの症状が出ていたケースも少なくありません。
ストレスサインは「行動」に出る
まずは行動変化に注目しよう
① 隠れる時間が増える
以前はリビングにいたのに、最近はベッドの下やクローゼットにこもることが増えた。
これは非常に典型的なサインです。
② 食欲の低下
猫のストレスは「食事」に表れやすく、
- 食べる量が減る
- 食べる時間が遅くなる
- 好物でも口をつけない
など、変化は様々。
③ 毛づくろいの量が増える(または減る)
ストレスが強いと、
毛づくろい=自分を落ち着かせる行為
が極端に増えることがあります。逆に、気力を失って毛づくろいをしなくなる猫も。
④ トイレ以外での粗相
膀胱炎・尿路トラブルが原因のこともありますが、
実は「強いストレス」のサインとして出ることも多いです。
⑤ 攻撃性の増加
今まで大人しかった猫が急に威嚇する。
触ろうとすると噛もうとする。
これは、追い詰められた時の“最後のSOS”。
身体に出るストレスサイン
体調変化は見逃してはいけない
① 下痢・便秘
自律神経の乱れがそのまま腸に影響します。
季節の変わり目や引っ越し後に多発します。
② 嘔吐
毛玉ではなく、空腹嘔吐でもなく、明らかに緊張状態に伴う嘔吐があります。
③ 体重減少
長期的なストレスが続くと、少しずつ痩せていきます。
④ 目つき・耳の角度の変化
耳が横に倒れる
目がずっと細い
瞳孔が開きっぱなし
など、感情が“顔に出る”タイプのサインもあります。
なぜ猫はストレスを感じるのか
原因は「人間には些細に見えること」
① 環境の変化
模様替え、来客、家具が増えた、引っ越し。
人間には日常的でも、猫には“重大な事件”。
② 騒音
工事音、掃除機、物が落ちる音。
私の経験では、特に「低音の振動」が猫に強いストレスを与えます。
③ トイレ環境の不満
清潔さだけでなく、
- 置く場所
- 砂の種類
- 数
にも繊細に反応します。
④ 他の猫との関係
多頭飼いの場合、
“仲良く見えても実は微妙に距離がある”
というのはよくあること。これが強いストレスの原因に。
⑤ 飼い主の生活リズム
夜型に変わった、仕事が忙しくなったなど、
人間側の変化を敏感に察知します。
今日からできるストレス対策
大がかりなことは必要ありません
① 安心できる「隠れ家」を作る
猫は落ち着く場所があるだけでストレスが半減します。
- ダンボール
- キャットハウス
- 高い場所
- クローゼットに柔らかい布
こうした“安心基地”を複数作るのが理想。
② トイレ環境を徹底的に整える
ストレス軽減の中で最も効果があるのがこれ。
- 砂は猫の好みを最優先
- 数は「頭数+1」
- 臭いがこもりにくい場所に置く
これだけで粗相・膀胱炎リスクは大幅に減ります。
③ スキンシップを“短く・頻繁に”
猫は「長時間ベタベタ」よりも
短いコミュニケーションを何度も
のほうが安心します。
④ ルーティンを変えない
急な生活リズムの変化はストレスの引き金に。
⑤ 音対策をする
環境音は猫に大きな負担です。
カーテン、ラグ、家具配置で音を吸収するだけでも効果的。
ストレスを感じやすい猫の特徴
性格も大きく関わる
- 神経質
- 音に敏感
- 他の猫が苦手
- 見知らぬ人が嫌い
- 甘えん坊で依存心が強い
こうした性格の猫は、環境変化に弱い傾向があります。
特に私が感じるのは、
「優しい猫ほどストレスを抱えやすい」
ということ。
怒れない、自己主張ができない、
そんな優しい性格の子が、静かにストレスを抱え込んでしまいます。

最後に:猫の“小さな変化”を愛で守る
あなたの観察が、猫の心を救う
猫がストレスを感じている時、
大きな声をあげて助けを求めることはありません。
静かに、少しずつ、変化を積み重ねていきます。
- なんとなく元気がない
- 最近よく隠れる
- なんだか表情が暗い
この“なんとなく”の違和感こそ、
猫からの一番わかりやすいSOSです。
猫のメンタルケアは、
決して難しいことではありません。
安心できる場所を作り、
生活リズムを整え、
コミュニケーションを少し増やす。
その一つひとつが、
猫の心をそっと支える大切な行為です。
そして何より、
あなたが猫を気にかけているというその姿勢が、
猫にとっては最大の安心材料になります。
大切な家族が、心穏やかに過ごせる毎日のために。
今日から少しずつ、できることを始めてみてください。


