猫は寒さに強い?冬の寒さ対策と快適な過ごし方

朝起きて部屋がひんやりしている冬の日。
布団をめくると、まるで小さな湯たんぽのように丸くなって眠る猫の姿——。
「猫は寒さに強いって聞くけど、本当?」
「このままでも大丈夫なのかな…?」
そんな不安を抱える飼い主さんは多いはずです。
30年以上、猫の衛生環境を見てきましたが、冬のトラブル相談は毎年必ず増えます。
風邪、泌尿器トラブル、関節の痛み、行動変化…
“寒さそのもの”よりも、寒さが猫の身体に与えるストレスが問題なのです。
私自身、若いころに「猫は寒さに強い動物だから大丈夫」と思い込んでいた時期がありました。
しかし、ある冬の日に体調を崩した愛猫の姿を見て、寒さ対策の重要性を痛感しました。
この記事では、プロとしての経験と、長年猫と暮らしてきた一飼い主としての視点から、
「猫は寒さに強いのか?」という疑問から、冬を快適に過ごすための具体的な対策まで
やさしく、丁寧に解説します。
猫は寒さに強い?
実は「強い部分」と「弱い部分」がある
世間では「猫は寒さに強い」という声がありますが、実際には個体差と環境差が大きく、誤解されがちです。
① 寒さに比較的強い理由
猫は砂漠地帯を祖先に持ち、体温を一定に保つ能力があります。
- ふわっと空気を含む毛並み
- 身体を丸めて体温を逃がさない姿勢
- 運動量を調整して代謝を変化させる
この“調整力”が、寒さに強いと言われる理由です。
② 寒さに弱い理由
一方で、室内飼いの猫は“自然界よりもはるかに寒さに弱い”傾向があります。
- 室内の寒暖差に弱い
- 体が小さく、気温の影響を受けやすい
- 年齢・持病・体脂肪率で耐寒性が変わる
- 冷えで免疫力が落ちる
特に高齢猫・子猫・痩せ気味の猫は、寒さが体調に直結します。
冬に増える猫のトラブル
寒さが引き起こす“見えない変化”に注意
毎年、冬になると動物病院への相談が増える3大トラブルがあります。
① 風邪症状(くしゃみ・鼻水)
寒暖差や冷えが続くと、鼻腔が弱くなりやすい。
特に急に部屋が冷える夜間や早朝に起こりがちです。
② 泌尿器トラブル(膀胱炎・尿が出にくい)
寒さで水を飲む量が減る → 尿が濃くなる → 膀胱への負担が増える
という悪循環が起きます。
私の元には「冬になると急に粗相が増える」という相談がよく来ますが、
その裏には“寒さによる泌尿器ストレス”が隠れていることが多いです。
③ 関節の痛み(高齢猫に多い)
関節が冷えると痛みが増し、
- ジャンプしなくなる
- 寝たままの姿勢が増える
- 触られるのを嫌がる
といった行動変化が起こります。
冬に猫が「寒いサイン」を出しているとき
行動でわかる“寒がりチェック”
猫は言葉では教えてくれません。
でも行動にサインが出ます。
- 丸くなって動かない
- 暖かい場所から離れない
- ストーブ・日だまりを追いかける
- 触ると耳や肉球が冷たい
- 食欲が落ち気味
ひとつでも当てはまれば、寒さ対策が足りていない可能性があります。
猫のための寒さ対策(基本編)
今日からできる、まず整えたい環境
① 暖房を“できるだけ一定温度”に保つ
猫に最適な室内温度は 20〜23℃前後。
「日中は暖かく、夜だけ冷える」が最も体に負担をかけます。
エアコンを弱めに付けっぱなしにするだけで、体調トラブルが劇的に減ります。
② 風が直接当たらない場所に寝床を
暖房の風が当たると乾燥と冷えを同時に招きます。
猫ベッドは…
- 窓際から離す
- 風が当たらない位置に置く
- 段ボールハウスなど「囲われた形」にする
これだけでも体温保持力が段違いです。
③ ブランケットより「ドーム型ベッド」
猫は狭くて暗い空間で体温を保つのが得意。
平たいベッドより、ドーム型やかまくら型の方が暖かさが逃げません。
猫のための寒さ対策(応用編)
さらに快適にする、プロのひと工夫
① 床暖・ホットカーペットを使う際の注意
猫は低温やけどを起こしやすいので、
必ずタオルや毛布を1枚挟む こと。
タイマーで自動オフを設定すれば安心です。
② 湿度管理は冬こそ重要
湿度が低すぎると風邪リスクが一気に上昇します。
40〜60%をキープすると、呼吸器の負担が軽くなります。
③ 水を飲む量を増やす工夫
冬は水を飲む量が減るため、泌尿器トラブルが増加します。
- ウェットフードの割合を増やす
- 複数の場所に水を置く
- 流れるタイプの給水器を使う
これだけで膀胱炎リスクが大きく下がります。
高齢猫・子猫はとくに注意
年齢や体質によって必要な対策が変わる
① 高齢猫
筋力・脂肪が落ちるため体温保持が苦手。
ベッドを低い位置にして、
ジャンプせずに暖かい場所に行ける工夫が必要です。
② 子猫
体温調整が未熟なので、寒さは命に関わることも。
人が快適と感じる温度でも寒い場合があるため、
暖房は「子猫基準」で設定してください。

猫が安心して冬を過ごすためには
“無理をさせない環境づくり”がすべて
猫は寒さに強いように見えて、実は環境の影響を強く受けます。
私はこれまで、環境改善だけで冬の体調不良が改善したケースを数え切れないほど見てきました。
- 温度を一定に保つ
- 暖かい寝床を作る
- 水を飲みやすくする
- 年齢に合わせたケアをする
この4つを整えれば、冬のトラブルは大幅に減ります。
愛猫が丸まって眠る姿は、見ているだけで心がほっと温まります。
その安心を守るために、今年の冬はぜひ“猫のための寒さ対策”を整えてあげてください。

